巨峰ワインに愛を込めて
葡萄との語らいこそが芳醇さの秘密

MODESTO BEE 誌より翻意訳転載

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 あなたが田主丸を訪れたとき、笑顔の紳士に会いたいと思えば、若竹屋酒造場に行き林田伝兵衛氏とワインの話をするとよい。この優雅で魅力的な紳士・林田さんは、久留米を少し離れた山の中で、(株)巨峰ワインを経営している。

 林田さんが年間に醸すワインはおよそ10万本。あのカルフォルニアで世界一の生産量を誇る「ガロ」がたった一日で瓶詰めする量にしかすぎないが、巨峰ワインの一本一本には林田さんの限りない愛が込められている。

 『 多くのワインメーカーは、まず自社のことを優先して考えます。でも、私は原料になる果実のことを考える時が一番幸せなんですよ。』と林田さんは目をキラキラ輝かせ、満面に笑みをたたえて話し出す。実際林田さんと意気投合した果物なら、葡萄であれ何であれ、例えば柿だって芳醇なワインになってしまうのだ。
 『私は果樹園の中を歩き回るのが好きなんです。君たちは一体どんなワインになりたいんだい?そう果物たちに問いかけるのです。』 

 巨峰ワインはこうした林田さんの愛情の産物なのだが、じつは彼の基盤は酒造業である。61歳の林田さんは、お父さんのお祖父さんの、そのまた曾祖父さんのそのまた…と、なんと13代 にわたり酒(米を醗酵させる日本の伝統的アルコール飲料)を造り続けてきた。
 『酒は単なる飲料ではありません。人間に活力を与えるものなのです。』と彼は語る。

 こうして林田さんは若竹屋酒造場と、山中にある巨峰ワインの間を行ったり来たりしながら毎日忙しいのだが、彼はこう言う。『仕事をしていて、疲れなどまったく感じませんよ。人々にパワーとエネルギーをもたらす酒造りのことで頭が一杯なんでね。』
 事実、「若竹屋」はこれまで数々の賞を獲得し日本有数の銘柄であり、日本国内はもとより広く欧米の人々にも愛好されている。

 今から30年ほど前、林田さんは先代から巨峰葡萄を使ってワインを造ってみたらどうかとアドバイスを受けた。巨峰とは『大いなる山々』の意、そして目の前の耳納山麓で豊かに栽培されている。以来、和食に合うワインの味を追求し続けてきた。

 『3年ほど前に私はワイン造りにとても大切なことに気がつきました』と林田さんは言う。それは、畑でたわわに実った葡萄の房を眺めていたある日のことだ。
 『どんな果実にもそれぞれ違った性格があり、一生の過ごし方も、終わりを迎えるときも違うんだな、と。これは果実にどうなりたいのかを聴いてみなければならんな』と、ふと気づいたという。
 果実たちの一生を、人の一生になぞらえる林田さんに言わせるならば『あなたも果実たちを眺めながら彼らの心になってごらんなさい。果実たちはきっとあなたに何かを語りかけてくれますから』となる。果実にとことん惚れこんだ林田さんの自然への愛情はただごとではない。

こうして巨峰はもちろん、メロン、いちご、キウイ、ブルーベリーなどなど、林田さんの手にかかればたちまち芳醇なワインとなって世に出てくることになる。『和食に適したワインは軽くてフルーティなものがひとつでしょうね』と言う。

 日本一小さなワインメーーカーとして、世界最大のメーカー「ガロ」について一言、という記者の質問に『私が味わったガロは、とても堅実で重厚な味わいで、おいしかったですよ』と誉め言葉。『いつかモデスト市のアーネスト・ガロ氏と会って、ワインを飲みつつ語りたいですね』と語ってくれた。

 『今のところ日本ではビールや酒が主流で、ワインやその他のアルコール度数の高い酒類の需要はわずかなものです。でも、私が果実達との対話を続け、彼らの声に耳を傾けているならば、いつの日か巨峰ワインが日の目を見るときが来ると信じていますよ』と、林田さんの目は輝いていた。

取材:Modesto Bee誌
文 :Mark Vasche


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